
アパート経営する、しない 相続税はどっちがお得?

残炎のみぎり、皆様におかれましてはますますご健勝のことと存じます。
先日のブログでは兵庫県の丹波で国内観測史上最高の気温が更新されたと冒頭で触れましたが、そこからすぐに群馬県の伊勢崎で史上最高が更新されました。気象庁によりますと、伊勢崎市では8月5日午後2時26分に気温が41.8度!を観測し、容赦の無い暑さがこれからも毎年やってきます。例年の8月の話題は戦争関連やジャンボジェット機の墜落が頭に浮かびますが、これに加えて毎年のように最高気温の更新も加わっていくのでしょうか。そのうち現場系の仕事では熱中症対策というより夏場はそもそも仕事をしないという企業が現れるかもしれないですね。
さて、本日の不動産コラムのテーマは相続問題についてです。
日本社会は少子高齢化が急速に進み、今後10年から20年にかけて、戦後に形成された多くの資産が世代交代の局面を迎えると言われています。その中心にあるのが「不動産」です。特に都市部や地方主要都市においては、相続によってアパートやマンション経営が次世代に引き継がれるケースが増えています。しかし、相続に伴う税負担、空室リスク、老朽化対応といった課題を適切に処理できなければ、せっかくの資産が重荷に変わってしまう可能性も否定できません。今回は税負担をピックアップし解説を行います。
なぜアパート経営が相続税対策になるのか
相続税は、亡くなった人が残した財産にかかる税金です。財産が多いほど税率も高くなり、支払う税金も増えていきます。そのため、相続のときには「財産がいくら分あるのか」を評価しなければなりません。現金の場合はとてもシンプルで、1億円を持っていればそのまま1億円として評価されます。ところが、不動産や株などは値段が常に変わるため、国が決めたルールに沿って「相続税用の評価額」を計算します。このとき、多くの場合、不動産の評価額は実際に買ったときの金額より低くなります。つまり、同じ1億円でも「現金のまま相続する」のと「不動産に変えて相続する」のでは、相続税の計算に使われる金額が違ってくるのです。結果として、不動産にしておいたほうが相続税を減らせることがあります。
アパートを建てて貸すとさらに評価が下がる
不動産を持っているだけでも現金より評価額は低くなりますが、さらに賃貸に出すと一段と下がります。理由はシンプルで、「自分で自由に使えないから」です。自分が住んでいる家や、自分が使っている土地は、好きなように処分できます。この場合は評価額も高めになります。一方、アパートのように他人に貸している場合、自由に使うことはできません。その分「価値が低い」と考えられ、相続税の評価額が下がる仕組みになっています。
- 自分で住んでいる家 → 「自用家屋」
- 自分で使っている土地 → 「自用地」
- 他人に貸している建物 → 「貸家」
- 貸家が建っている土地 → 「貸家建付地」
こうした「貸家」「貸家建付地」として評価すると、建物や土地の価値が一定の割合で減らされます。割合は地域や物件の状況によって決まっていて、空室がある場合はその分も考慮されます。
アパート経営する、しない 相続税の違い
実際に、アパート経営をしている場合とそうでない場合で、相続税がどれくらい違ってくるのかを計算してみましょう。
前提条件
- 土地の評価額:6,000万円
- 建物の評価額:4,000万円
- 相続人1人
相続税には「基礎控除」があり、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。今回は相続人が1人なので、基礎控除額は 3,600万円 です。税率は、国税庁が定める「相続税の速算表」に基づいて計算します。
① アパート経営をしていない場合
まずは、土地と建物をそのまま相続したケースです。
- 土地+建物の評価額=6,000万円+4,000万円=1億円
- 課税価格=1億円-基礎控除3,600万円=6,400万円
速算表にあてはめると、
相続税額=(6,400万円-控除額700万円)× 税率30%
=1,710万円
となります。
② アパート経営をしている場合
次に、同じ土地と建物をアパート経営に使っていた場合です。
借家権割合0.3、借地権割合0.6、賃貸割合1.0と仮定します。
※借家権割合は全国一律30%
アパートの土地の相続税評価額は、以下の計算式で求められます。
土地の評価額 × { 1 - (借地権割合) × (借家権割合) × (入居率) }
また借地権割合については、30~90%の間で決まっています。
アパートの建物部分の相続税評価額は、以下の計算式で求められます。
建物の相続税評価額 × { 1 - (借家権割合) ×(入居率) }
土地の評価額=6,000万円 × {1-(0.3 × 0.6 × 1.0)} =4,920万円
- 建物の評価額=4,000万円 × {1-(0.3 × 1.0)} =2,800万円
- 合計=4,920万円+2,800万円=7,720万円
- 課税価格=7,720万円-基礎控除3,600万円=4,120万円
この金額を速算表に当てはめると、
相続税額=(4,120万円-控除額200万円)× 税率20%
=784万円
結果の比較
- アパート経営なし:1,710万円
- アパート経営あり:784万円
いかがでしたでしょうか。他サイトの不動産記事や相続問題に強い税理士事務所のHP等にも豊富な例を用いて様々な角度から同じような問題を取り上げています。勉強したてで説明がしっくり来ない場合でもいくつかサイトを横断すれば断片的な知識が集積して納得できる理解がくるかと思います。相続問題はいざというときに焦らないように早めに余裕をもって日々勉強をしていきたいものです。