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2026年相続税改正と不動産オーナーの戦略転換

タワーマンション判決が示した「節税の限界」とこれからの資産設計

2026年(令和8年)の税制改正は、不動産オーナーにとって大きな転換点となる内容を含んでいます。これまで相続対策の中心にあった「不動産による評価圧縮」という考え方は、その前提が大きく見直されることになりました。その背景には、いわゆる「タワーマンション節税」をめぐる裁判があります。この判例は、単なる一事例ではなく、今後の相続税の考え方そのものを方向付けた重要な出来事といえます。本コラムでは、この判例を踏まえながら2026年改正の本質を整理し、不動産オーナーが今後どのような視点で資産を見直すべきかについて解説いたします。まずは問題となった事例を整理します。被相続人は約10億円の借入れを行い、13億円を超える2棟のマンションを購入しました。相続人は、従来の財産評価基本通達に基づき、これらのマンションを約3億3,000万円と評価しました。

 

その結果、

・マンション評価額:約3億3,000万円

・借入金:約10億円

 

となり、債務控除により相続税額は0円として申告されました。しかし、この評価について国税庁は問題視します。マンション評価額が実態とかけ離れており、過度な節税であると判断しました。そのため、不動産鑑定士による評価が採用され、最終的には約12億7,000万円と再評価されました。この結果、相続人には約3億円の追徴課税が課されることとなりました。さらに裁判においても、国税側の主張が認められています。

 

この判決が示した重要なポイント。

 

従来の考え方では、財産評価基本通達に基づいて評価していれば、一定の安全性があると考えられていました。しかし今回の判決では、「形式的にルールに従っていても、実態とかけ離れている場合は否認される」という考え方が明確に示されました。つまり、これまでのように「評価ルールをどう使うか」という発想ではなく、「その評価が合理的かどうか」が問われる時代に入ったということになります。今回の2026年税制改正は、この判決の流れを受けて制度化されたものと考えることができます。新たな評価方法については、課税上の弊害がない限り、取得課税を基に地価変動等を考慮した価格の80%相当額で評価できるとされています。詳細な計算方法や適応範囲は現時点で明らかではなく、今後の情報を待つ必要があります。適応時期は令和9年の1月1日~の相続・贈与とされています。タワーマンションを含む区分所有マンションについては、高層階ほど評価が低くなるという従来の歪みが是正される方向となりました。

 

また、以下のような改正も重要です。

 

・相続開始前5年以内に取得した賃貸不動産の評価見直し

・不動産小口化商品の評価の厳格化

・節税目的とみなされる取引への対応強化

 

これらを総合すると、「明らかに税負担を下げることだけを目的とした不動産取得は認めない」という強いメッセージが読み取れます。今回の改正により、不動産オーナーが直面する最大のリスクは「納税資金不足」です。評価が時価に近づくということは、そのまま相続税額の増加につながります。一方で、不動産は流動性が低く、すぐに現金化できる資産ではありません。

 

その結果、

・資産はある

・評価額も高い

・しかし現金がない

という状況に陥る可能性があります。

 

この場合、相続人は納税のために不動産を売却せざるを得なくなります。しかし、相続直後の売却は時間的制約が大きく、不利な条件での売却になりやすいという問題があります。したがって、これからの相続対策では、「いくら節税できるか」ではなく「税金をどう支払うか」という視点が極めて重要になります。

 

不動産オーナーに求められる3つの戦略

このような環境の中で、不動産オーナーが取るべき戦略は大きく3つに整理できます。

 

1.長期保有を前提とした投資判断

これまでのような短期的な節税目的の不動産取得は、今後は効果が限定的になります。

そのため、長期保有を前提に、安定した収益を確保できるかどうかを重視する必要があります。

 

2.キャッシュフロー重視の運用

表面利回りや節税効果ではなく、実際に手元に残るキャッシュフローを重視することが重要です。
具体的には、空室率・修繕費・管理コストを考慮したうえで、相続税を支払っても資産が維持できるかを検討する必要があります。

 

3.納税資金の事前確保

最も重要なのは、納税資金の確保です。具体的には、現預金の確保・収益の積み上げ・売却可能資産の整理などを事前に行っておくことが求められます。不動産だけを増やすのではなく、資産全体のバランスを考えることが重要になります。

 

今回の改正と判例により、不動産オーナーは大きく二極化すると考えられます。一方は、従来の節税スキームに依存し続ける層であり、税務リスクや資金繰りの問題に直面する可能性があります。もう一方は、不動産を事業として捉え、収益性や資金管理を重視する層です。この層は、むしろ今回の環境変化をチャンスとして活用できるでしょう。